六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
空はいつの間にか、雲が厚くなっていた。
「蒸しあちぃなぁ」
太一が汗だくになったタンクトップの胸をパタパタと扇ぐ。
本当に、じっとりした空気が充満しているようだ。
「清良ー」
道場の戸を開けるが……。
そこには、清良はいなかった。
代わりに、留衣さんがいる。
「留衣さん?清良は……」
こちらに気づいた留衣さんは、顔を歪めた。
「……いない」
「え……?」
「今さっき、この近くの結界に異常があったから、見にきたんだ。
だけど……」
隣で、瑛さんが息を飲む音がした。
「やはり、さっきの違和感は……!」
緊張した声に、鳥肌が立つ。
「まさか、清良に何か……!」
「えぇっ!?」
「とにかく探すぞ。
お前は一人になるな。
太一か留衣さんといろ」
そう言うと瑛さんは、風のように走りだす。
その後で、太一が違う方向に走っていった。