六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


「ふ……ぁ……っ」


突然、口を何かで塞がれる。


額にさらりとその銀髪がかかり、

舌があたしの中に入ってきて、やっと。


瑛さんが、彼の唇が、

あたしの口を塞いでいたのに気づいた。


「……!!」


心臓が止まるかというほどの衝撃の次に来たのは、違和感。


自分の舌に、小さな何かが乗った。


それは微妙な苦さを口に広げる。


思わず唾液を飲み込んでしまうと、

その違和感は喉を通って、落ちていった。


「……な……っ」


ぼんやりした頭で、唇を離した彼を見上げた。


瑛さんはいつもと変わらぬ……

いや、いつもより少し穏やかな顔をしていた。


「睡眠薬だ。すぐに効く」


「ば……っ」


それなら、普通に渡してよ。


こんなこと……バカじゃないの?


許嫁が知ったら、やきもちやかない?


貴方の村では、これが普通なの?


そんな沢山の質問は、睡魔に連れ去られる。


< 311 / 691 >

この作品をシェア

pagetop