六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「ふ……ぁ……っ」
突然、口を何かで塞がれる。
額にさらりとその銀髪がかかり、
舌があたしの中に入ってきて、やっと。
瑛さんが、彼の唇が、
あたしの口を塞いでいたのに気づいた。
「……!!」
心臓が止まるかというほどの衝撃の次に来たのは、違和感。
自分の舌に、小さな何かが乗った。
それは微妙な苦さを口に広げる。
思わず唾液を飲み込んでしまうと、
その違和感は喉を通って、落ちていった。
「……な……っ」
ぼんやりした頭で、唇を離した彼を見上げた。
瑛さんはいつもと変わらぬ……
いや、いつもより少し穏やかな顔をしていた。
「睡眠薬だ。すぐに効く」
「ば……っ」
それなら、普通に渡してよ。
こんなこと……バカじゃないの?
許嫁が知ったら、やきもちやかない?
貴方の村では、これが普通なの?
そんな沢山の質問は、睡魔に連れ去られる。