六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
……信じらんない。
目を覚ました時には、あたしはベッドの上にいた。
どうやらビジネスホテルの一室らしい。
飛び起きると、前のテーブルで、
太一と瑛さんがテイクアウトしたらしい牛丼を食べていた。
うちの田舎にはないけど、有名なチェーン店の容器だ。
「あ、姉ちゃんおはよう。
てかもう昼だよ。
運んでもぜんっぜん起きねーし、信じらんねぇ」
「だっ、あっ、ぐぅぅ……」
だって瑛さんが無理矢理、しかもあんなやり方で、
睡眠薬なんか飲ますからじゃん!
だけどそんな事を言うわけにもいかず、
怪獣みたいな鳴き声になってしまった。
しかも本人はしれっと牛丼食べてるし!
「運転主さんは?」
「別の場所で待機。
一応俺等三人だけでいねーと」
何かあった時のためにね。
太一はそう言いながら、もう1パックあった牛丼をあたしに差し出した。