六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「私は……
一族に見捨てられ、死に物狂いでここまでやってきました」
伊奈孝太郎の父親は、一族から与えられた『仕事』に失敗した。
そのせいで、一家全員が、逃げるように一族から離脱した……。
そんな瑛さんの話を思い出す。
「あの一族は、依頼を受ければ何でもする。
諜報も、護衛も、暗殺も。
私は一族から離れて初めて、彼等が歴史の中でしてきた事を知りました。
彼等は時の権力者の為に働き、多くの弱き者達を犠牲にして、歴史を動かしてきた」
伊奈は、昔話のようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
「時代の流れと共に簡単に主を変え、
人を陥れ、疑いあわせ、戦わせ、血を流させる。
歴史上の大きな合戦や疫病には、ほとんど岡崎一族が関わっている」
「だから……何だと言うんだ」
耐えかねたのか、瑛さんが厳しい目で伊奈をにらみつけた。