六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「姉ちゃん、しっかりしろ!
結局こいつも力で全てをねじ伏せようとしてんじゃん!
何が平和のためだよ。
ただの大義名分じゃないか!」
伊奈が太一をにらみつける。
その威圧感に閉じてしまった太一の言葉を繋いだのは、瑛さんだった。
「たまにはもっともな事を言うじゃないか」
「なっ、何だよたまにはって!」
「ほめているだろう。
素直に受け取れ」
いつもの口調で言うと、強い目線で伊奈に向き直った。
「こいつの言う通りだ。
結局、お前にはもう後が無いから、
夢見姫を使って自分に都合の良い世界を作ろうと言うのだろう?」
伊奈の顔がわずかに険しくなる。
瑛さんは少しも怯まずに言葉をぶつけた。
「岡崎一族を離脱し、何とかここまで這い上がったのに、
夢見姫の拉致に三度も失敗した。
おそらく、今の立場も危ういのだろう?
逆怨みもいい加減にしておけ」