六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
伊奈の顔が、怒りに歪んでいく。
何でそんな言い方するかな、と太一がオロオロしていた。
「……何と言いましたか……?」
「お前がしようとしてるのは、単なる復讐だ。
岡崎一族と、その後のお前をとりまいた辛い現実への――」
「バカな事を。
単なる復讐ですって……?」
「そうでないと言い切れるのか」
「…………」
「岡崎一族を滅ぼしたいのなら……
まず、俺を倒してから言え」
思わず息を飲む。
どうして……。
どうしてわざわざ、そんな挑発を……。
「……良いでしょう。
どうせ全滅させるんですから。
貴方の血を、最初に捧げましょう。
見ていなさい、夢見姫」
そう言って、伊奈が札を構える。
「待って、やめて――」
「黙っていろ」
瑛さんがあたしを見つめた。
そして、小さな声で言う。
「どうせ戦わなければおさまらない」
「そんな……」