六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「俺があいつの相手をする。
お前達は、清良の奪還だけに専念しろ」
「……!」
強い光を放つ瞳。
次に何を言われるか。
あたしは何故か、わかってしまう。
「……清良を取り戻したら、そのまま逃げろ」
「ダメです、そんな……っ」
予想通りのセリフに戸惑うあたしを無視し、
瑛さんは太一を見つめた。
「良いな、太一。
頼んだ」
「……はい!」
「ちょっ、待っ……!」
何勢い良く返事してるの!
と、太一に聞く暇もなく。
「余所見する余裕はありませんよ!」
伊奈の低い声と共に、お札が式神に変わる。
サングラスとスーツを身につけた人型の式神が、何十人と伊奈を取り巻いた。
「無茶です、一人でなんて!」
「良いから、お前は隙を見て逃げろ。
あの留学生を利用しても良いから、何としても帰れ」
「でも……!」
式神をにらんだまま苦無を構えた瑛さんが、ぼそりと呟く。