六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「これは俺が片付けなければならない」
「瑛さん……」
「……それに」
「……?」
「……俺の代わりはいる。
また別の者に、依頼をすれば良いだけだ」
見えるのは、背中だけ。
どんな表情で話したのかはわからなかった。
ただ、その声はあたしの胸を締めつける。
「……行くぞ、美合孝太郎!」
こちらを振り返らずに。
風のような速さで瑛さんは駆けだしてしまう。
式神は一斉にそちらを向いた。
「姉ちゃん、早く清良さんを!」
太一に手を引かれ、我に返る。
そうだ、清良!
あたし達は瑛さんと逆方向に走り出した。
十字架に張りつけられた、清良の元へ。
すると、瑛さんに集中していた式神が二分し、清良を取り囲んだ。
「クソッ、やっぱり簡単にはさせてくれねーか!」
太一がお札を取り出す。
「やられっぱなしだと思うなよ!」