六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


「これは俺が片付けなければならない」


「瑛さん……」


「……それに」


「……?」


「……俺の代わりはいる。

また別の者に、依頼をすれば良いだけだ」


見えるのは、背中だけ。


どんな表情で話したのかはわからなかった。


ただ、その声はあたしの胸を締めつける。


「……行くぞ、美合孝太郎!」


こちらを振り返らずに。


風のような速さで瑛さんは駆けだしてしまう。


式神は一斉にそちらを向いた。


「姉ちゃん、早く清良さんを!」


太一に手を引かれ、我に返る。


そうだ、清良!


あたし達は瑛さんと逆方向に走り出した。


十字架に張りつけられた、清良の元へ。


すると、瑛さんに集中していた式神が二分し、清良を取り囲んだ。


「クソッ、やっぱり簡単にはさせてくれねーか!」


太一がお札を取り出す。


「やられっぱなしだと思うなよ!」


< 329 / 691 >

この作品をシェア

pagetop