六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
ヒュッと空間を切る音がして、瑛さんが飛び退く。
「……そんな得物を隠し持っていたか」
伊奈の手に握られていたのは、黒い鞭(むち)だった。
「目障りです。
その髪も、目も。
潰して差し上げましょう!」
伊奈が鞭を振り上げると、ビュォ、と霊力が鳴る音がした。
凄まじい力の余波が、部屋中に押し寄せる。
「瑛さん!」
降り下ろされた鞭は空間を舞い、瑛さんを捕らえようとする。
「ちっ!」
瑛さんは、紙一重でそれを避けた。
はずだった。
「……!」
つぅ、と瑛さんの白い頬に赤い線が走る。
「何で!?当たってないのに!」
目を凝らすと、伊奈の鞭に黒いトゲが沢山あるのを見つけた。
「霊力のトゲ!?」
「姉ちゃん、よそみすんな!
俺達の相手は式神らしいぜ!」
太一に言われ、ハッとする。
いつの間にか周りに式神が集まりはじめていた。