六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
伊奈の周りに、凄まじい霊力が巻き上がる。
それは風のように、あたし達に叩きつけられた。
吹き飛ばされないように必死に立つあたしの手を、誰かが引いた。
「まりあ、行こう」
「でも、清良……」
「行こう、姉ちゃん」
「太一……。
ダメだよ、瑛さん、怪我してるんだよ」
あたしを連れて逃げようとする二人の前に、オーリィが立つ。
「早う行き!」
彼が叫ぶと同時に、黒い鞭がしなる。
それは何処までも伸び、自在に動く。
足首を絡めとられる直前、太一があたしを抱いて跳んだ。
「オッサン、諦めや!」
オーリィが叫ぶと、その右腕にぶわりと何かが湧き出した。
金色のオーラを放つそれは、多分霊力と同じもの。
「……しっかり見とき!!」
何もない空間を殴るように突き出した右手から、金色の塊が放たれる!
「!」
伊奈はそれから高く飛び退いた。