六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
小休止
『昨夜都内で起こったビル火災の原因は、依然不明です。
何者かが一階の床を破壊した跡がありましたが、詳細は不明です。
犠牲者はおらず、警察では放火の疑いが強いとして、調べを進めています』
意識が戻って、最初に気づいたのは、こんな声だった。
「あ、起きた?」
「!?」
目を開けると、息がかかりそうなほど近くに顔があって、
心臓が止まりそうになる。
「おおおお、オーリィ!近い近い!」
「ついでに目覚めのキスをって……
おー、元気そうやんか」
悪い冗談を言う顔にパンチを食らわすと、
オーリィは大げさに痛がるふりをした。
手にはテレビ画面が映ったスマホが握られている。
「ここは……」
見慣れた天井に、懐かしい木の香り。
「帰ってきたの?」
間違いない、ここは留衣さんの家だ。
清良と寝泊りしていた部屋だ。
「そやで。
キミは最後の最後で力尽きてしもたから、
僕と太一と清良で運んで逃げたんや」
オーリィの服の袖から、痛々しく白い包帯が見えた。