六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
瑛さんはまっすぐあたしをにらんでくる。
その顔には嫌悪も恥じらいもない。
真っ赤なのは、あたしだけ。
「思考停止って……」
「お前、おかしな術を使っただろう。
あの時からただ者ではないと思っていたが――」
「つ、使ってません、そんなの!」
この人、本気?
どう考えても、キスじゃん、あれは。
それを嫌がらせとか、術とか……。
「じゃあ、何なんだ」
そんな、キョトンとした顔で見られても。
いっそのこと、伊奈と同じように燃やしてほしい……。
バクバクする心臓を押さえて、
「あわわわ」としか言わないあたしを見つめて。
瑛さんは、何かに気づいたような顔をした。
「まさか、お前――」
「あああ、あれは!!
寝ぼけただけです!!
すみません、うわあああぁぁ」
何と続くのか聞くのが怖かったあたしは、
あっさり壊れて逃げてしまった。