六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
これから
あれ?
あたし、夢を見てる。
いつもの、未来に起こる事の夢じゃない。
自分が寝ているとわかるくらい、浅い夢。
しかもここは……。
ぐるりと周りを見渡す。
天井から垂れ下がる、色とりどりの飾り達。
ここは一度来た事がある。
お母さんが眠っている、祭壇だ。
その前に、誰かがいる……。
あれは……。
「お母さん……?」
透き通るような白い肌に、長い黒髪。
こぼれるくらい大きな瞳に、つんとした鼻。
薔薇の花弁のような唇。
その女性は、一度見ただけの写真の女の人だった。
間違いない。
「お母さん……ですよね?」
一歩近づいて聞くと、女性は笑ってうなずいた。
「お母さん……」
『まりあ、ごめんね。
遅くなって』
初めて聞いた、お母さんの声。
透き通った、鈴のような音で、心を震わせる。