六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「待って、ということは、まだあたしは、戦わなきゃいけないの?
敵は伊奈孝太郎だけじゃないってこと?」
『そう、貴女の本当の試練はこれから始まるの』
お母さんの悲痛な声に、自分の顔がゆがんでいくのがわかった。
しかしお母さんは、優しい瞳で見つめ、
両手であたしの頬を包んだ。
『まりあ、私の予言が外れた事はないけれど……
貴女なら、運命を変えられるかもしれない』
「どういうこと?
これから何があるの?
詳しく教えてよ……」
『ごめんなさい……言いたくないの。
わたしは貴女の母親だから。
どうしても、貴女の幸せばかり願ってしまう』
「…………」
『運命を変えるためには、まず素直になって。
貴女が愛している人に、一生懸命、愛していると伝えて』
「何、それ……」
目の前に愛しいお母さんがいるのに、
心に浮かぶのは、月の光のような銀髪と、紫色の瞳だった。