六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
そんな事を考えながら、アキちゃんの後をついていくと。
以前清良がさらわれた道場に、たどり着いた。
「ここ?」
「にゃあ」
アキちゃんが自信満々なので、閉まっている戸に、ゆっくり指をかける。
静かに開くと、道場の真ん中で、瑛さんはあぐらをかいていた。
両の目は閉じられ、長い睫毛が頬に影を作っている。
「…………」
もしかして、修行の一貫?
邪魔しちゃうかな、と少し迷ったけど。
お客様をあんまり待たせてもな、と声をかける事にした。
「あのー、岡崎瑛さーん。
お客様がいらしてますけどー」
あたしの間抜けな声にすぐ反応し、彼は目を開けた。
「……何だって?」
「お客様ですって」
「俺に?」
不思議そうな顔をして、軽やかに立ち上がる。
「何してたんですか?」
「あぁ、瞑想を……少し」
「へぇ」
本当に仕事熱心というか、すごいなぁ、この人。