六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「ところで、客とは誰だ?
こんな早朝から」
「さぁ……あたしはお会いしてません」
あたしは先ほどの女性とのやりとりを、簡単に説明した。
瑛さんの受け答えはごく普通で、ホッとする。
部屋にいないなんて、
もしかして勝手に岡崎一族の村に帰っちゃったんじゃないだろうか。
そんな心配をしてしまうなんて、どうかしてた。
「約束とか……」
「ない。
どうせ一族の者か、新しい依頼人だろう。
いずれにせよ、無礼者だ」
突然訪ねてくるなんて。
ブツブツ言う瑛さんの後ろをついて、居間に戻ると。
「……え?」
そこには、もう全員が揃っていた。
いつものテーブルの、いつもの場所に……。
そして一人だけ。
見た事の無い人がいた。
横の瑛さんを見ると、彼は驚いて声も出ないという顔をしていた。