六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


後頭部で1つに結んだ、長い黒髪。


白くて小さな顔に浮かぶ、

長い睫毛に縁取られた、濡れた葡萄のような瞳。


それに、小さな紅い唇。


化粧気はないのに、その人は、とても綺麗だった。



「琴(こと)……?」


「瑛様!」



瑛さんに名前を呼ばれたその人は、嬉しそうに立ち上がり。


あたしの真横で、彼に遠慮なく抱きついた。


もしかして、この人は……!


「やめろ、離れろ!

はしたないぞ、琴!」


「すみません瑛様!

でも、あぁ、よくご無事で……」


体がフリーズする。


留衣さんが二人に向かって、咳払いをした。


「あー、瑛、

君から皆に紹介してくれるかな?」


「……あ、はぁ。

っと……一族に仕える星見・知立(ちりゅう)家の娘で……」


「瑛様の許嫁の、琴と申します」


歯切れの悪い瑛さんに代わり、

琴さんが明るく話して、ぺこりと頭を下げた。


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