六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
とにかく冷えきってしまったあたしの気持ちは。
どんなに料理を褒められようが、お世辞を言われようが、
開くことはなかった。
ごめんね、心狭くて!
「ところでお琴さんは、突然何をしに来たん?」
オーリィが尋ねる。
「はい、あの……
ただ、瑛様にお会いしたくて……」
ぐぇほっ、と瑛さんがお味噌汁を吹いた。
「汚っ!
あのー琴さん、知立家ってそこらへんは自由なの?」
清良が嫌そうに聞く。
「いえ、本来なら滅多に村の外には出られません。
しかし、今回は特別で……」
「特別?」
「任務が思ったより長引いてらっしゃるようだから、
心配で様子を見にきました。
それに……今日は誕生日だから」
「……はぁっ?」
やっと呼吸を整えた瑛さんが、顔を上げた。
「まさかお前、それだけのために、
予告なしで早朝に押しかけたのか!?」