六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
タイトロープ
「男なんてバカばっかり!」
ドスリ!
右手に持った包丁は、
見事に足の骨の間の筋と関節を断絶した。
……昼食のための鶏肉の。
「ひ、姫様、大丈夫ですよ、そんな力いれなくても……」
「はぁ?」
「や、何でもありません……」
清良は太一を連れて、修行と称し、
道場でボコボコにすると言っていた。
留衣さんは今日はお仕事。
先ほど、スーツを着て出ていった。
「ま・り・あ~……」
台所の入口から、長い影がにゅるりと入ってきた。
「なぁ、構って~」
「今昼食の準備してるの。
見えない?オーリィ」
「もー……僕が癒してやるから、
二人になれるとこ行こう?」
オーリィは背後から、長い腕を巻きつけてきた。
お手伝いさんが「ひゃあ~」と顔を赤くする。
あたしだって普通なら慌ててしまうけど、
今は何故かおかしいくらい冷静だった。