六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
よく見ると、その男の人に厚みはなく、部屋の向こうが少し透けて見えていた。
『ご無沙汰しております、安城家の皆様。
非礼をお許しください』
「あなた、留衣(るい)さん……?」
突然話し出したその映像に向かい、お母さんが尋ねる。
『はい、留衣です』
「まぁ……立派になられて……」
着物を着たその男の人は、優しく微笑む。
肩までありそうな黒くて長い髪を、後ろでまとめている。
銀髪の彼よりも、少し歳上に見えた。
「まりあ、あなたのお兄様よ」
「えっ」
お母さんに言われ、お父さんに手を引かれて前に出た。
ちょっと待ってよ。
家族と血が繋がってないのもショックなのに、いきなりお兄さんとか言われても。
そう言われれば、少し似ているような気もするけど……。
『まりあか。大きくなったね。
お礼を言います、安城夫妻』
「いえ……」
お父さんは恐縮したように、短い返事をした。
「それで、何故いきなりいらっしゃったのですか?」
『あぁ、そうでした。
実はそこにいる彼から連絡をもらいましてね』