六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
部屋に戻る間、
ショートパンツのポケットの中で、何かが揺れるのを感じた。
「そう言えば……」
朝食を終えたら蔵に行こうと思って、鍵を持って来たんだった。
そう、瑛さんと行こうと思って……。
ブンブンと頭を振った。
さっきからどうしても、
あの二人が部屋で、あんなことやこんなことをしているのを想像してしまう。
久しぶりに会ったんだもんね……。
しかもあんな綺麗な許嫁……。
あの人が、手紙を花に変えるような術を使える人……。
しかも誕生日だってさ。
知らなかったし。
「あーもぅ、やだやだ!
うちらだけで行こう、アキちゃん!」
「にゃあ!」
なるべく何も考えないように、あたし達は蔵へ向かった。