六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
ドンドンドンドン!!
「まりあー、いるー!?」
突然の音と声に、ビクリと震えたのは、どちらの肩だったのか。
とにかく、瑛さんは一人で立ち上がった。
「まりあー?」
「はいっ、いるよー!」
よく知った清良の声に、返事をする。
「ランチだよー!
まだ調べものしてんのー?
瑛もいるー?」
清良の声は、やけに遠くから聞こえる。
そういえば、蔵の入口の鍵は、瑛さんが閉めたんだっけ。
「あ、の……」
「良いから」
大きな声を出そうとしたあたしを、瑛さんが制する。
「先に行ってる。
お前は……、そのヒドイ顔を何とかしてから来い」
そう言うと、自分だけさっさと階段を上がっていってしまった。
……本当になんなの、あの人……。
しかし、さっきまでの被害者めいた気持ちは、少し楽になっていた。