六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
時が経った今ならわかるよ。
あたし達は、お互いに、つなわたりの真っ最中だったんだよね。
これ以上、お互いの領域に、踏み入れるかどうか。
自分の生きてきた世界を否定するかもしれない、
相手の世界に踏み入れるかどうか。
一歩間違えば、待っているのは奈落だけ。
あたし達はそれをわかってたから、臆病になった。
どこにも、進めなかった。
ギリギリの線を保つ事に、精一杯だった。
あの時、伝えられていたら。
好きだと言えていたら。
その後の悲劇の幕は、上がらなかったのかな。
あたしの隣には、今、貴方がいたのかな。
なんてね。
結局、どうにもならなかったよね。
でも。
まだ時々、頭をよぎる事があるよ。
あの時、あたしに、勇気があったなら。
そう、思うよ。