六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
例えばの話 【瑛】
「まりあは?」
「……少し、気分が悪いから休んでいくそうだ」
「えっ?大丈夫なの?」
「あぁ。
何かあったら、使い魔が知らせてくれる」
「…………」
西尾清良が、責めるように俺を見る。
とうに慣れていた筈のそれが、今はうっとうしい。
「喧嘩でもしたの?」
「は?」
「アンタ、泣きそうな顔してる」
なんだと?
こいつは、何を言ってる?
「……ほこりっぽかったからな。
目に染みただけだろう」
我ながら、わけのわからない言い逃れ。
それ以上追求されるのがうっとうしいので、
俺も昼食はとらないことにした。
一人で屋敷の裏の森に行く。
頭を冷やすために。
一体どうして、俺はあんなことをしてしまったのだろう。
自分が傷つけた方なのに。
どうして俺まで、こんなに呼吸が苦しいのだろう。