六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
『力が?』
『そう。
貴方は長く、夢見姫達といすぎた。
そのせいで、本来の輝きを失い、
彼等の星の引力に負けてしまいそうになっている』
『…………』
なんと答えて良いかわからなかった。
琴は、知立家の中でも最高位の星見。
彼女が星を見誤ることは、そうそう無い……。
『ゆめゆめ、お忘れめされるな』
琴の声が脳に響く。
『貴方が背負うものの重さを。
貴方の働きに一族の命運がかかっているのです。
途中で逃げ出そうものなら、お母様がどうなるか……』
『わかっている!』
思わぬ大声が出て驚いたのは、
琴だけでなく自分自身もだった。
琴は怯まずに、言葉を送り続ける。
『貴方の星が輝けるのは、一族にいるから。
一族のおかげなの。
そこから離れては、生きていけない。
勘違いされぬように。
夢見姫達の世界が、正しいなどと。
それは、一時の気の迷いにすぎません』