六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
あの顔を思い出すと、不思議と気持が楽になっていく。
そうして……。
彼女の気配を追い、蔵へ行った。
そうするべきじゃなかったのに。
なるべく普通の顔で、彼女に会いたかった。
「……っだから、
俺は、何をしてるんだ!」
森の中で叫んだ声は、すぐ自分の影に吸い込まれていく。
苛立ちを抑えられず、木の幹に拳をぶつけた。
どうして、あんなことをしたのだろう。
ただの冗談。
笑って欲しかった。
それは、真実であり、卑怯な嘘だ。
いいわけだった。
ただ、彼女のぬくもりがほしかった。
不安でしょうがなかったから、彼女の強さをわけて欲しかった。
そんなこと、言えるわけがなかった。
なのに……。
よほど恐ろしかったのか、
さんざん泣き喚き、罵倒した後だったのに。