六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
『母上は、どこかへ連れていかれちゃった……』
瑛さんは顔を歪めると、
まためそめそと泣き出してしまった。
なに……これは……。
一体、何の夢なの?
立ち尽くしていると、突然瑛さんの後に人影が現れた。
綺麗な、巫女のような服装をした女の人。
思わず息を飲んだ。
彼女は琴さんにそっくりだったのだ。
その人はあたしが見えていないようで、瑛さんにだけ話しかける。
『泣いている暇はありませんよ』
『…………』
『明日から修行が始まります。
貴方は忍として、一人前にならなければ』
『いやだっ……あんなやつらに、教えてほしくない……っ』
『そうして、与えられる任務を全て完了しなければ、
一生母上には会えませんよ』
『!?』
瑛さんは顔を上げた。
その顔にあったのは、悲しみと恐怖。
女性の声は、彼に冷たく降り注いだ。