六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「瑛……?」
オーリィが驚いたように言った。
階段を降りてきた彼は。
静かに、声をかけてきた。
「……そいつを、渡してくれ」
ハッとしてそちらを見る。
そこには、いつものシンプルな私服ではなく。
漫画やアニメで見る、
忍者のような衣装を身につけた、瑛さんが立っていた。
と言っても、頭巾は無く、
残酷なほど美しい顔はむきだしになっている。
袖にも膝下にも、無駄な膨らみはない。
「なんちゅうカッコや。
帰る時はそれやないとあかんのか?」
冗談めかして言うオーリィの声に、緊張が混じる。
オーリィはあたしを立ち上がらせ、自分の背中で守るようにした。
それを見て、瑛さんは冷たい声を放つ。
「……夢見姫を渡せ」