六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
紫色の視線が、こちらを射抜く。
その顔は、今まで見た事のないほど冷たかった。
一緒に学校に行った彼も。
一緒にご飯を食べた彼も。
一緒に戦った彼も。
つい昨日、泣きながらキスをした彼も。
どこにも、いない。
いるのはただ、悲しいほど綺麗な忍だけ……。
「渡せって、どういう事やねん」
「……連れていく」
「どこへ」
「一族の元へ」
代わりに、オーリィが受け答えをする。
あたしはぼんやり、それを聞いていた。
「まりあの兄さんには、許可もらったんやろうな?」
「そんなわけないだろう」
「……瑛」
「夢見姫を連れていく。
それが一族の命令だ」
そう言い放つと、瑛さんは苦無を取り出した。