六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


「……俺はずっと、お前の母が残した予言に苦しめられてきた」


「…………」


「そして、

お前を連れていかなければ、母親が……。

俺の母の命がない」


瑛さんの瞳を見ながら思い出したのは、伊奈孝太郎の事。


仕事を失敗した者に待つのは……絶望だ。



「……岡崎一族は、まりあをどうする気や。

こっそり連れ去るって事は、どうせ良い事やないんやろ?」


「……お前に話す義務はない」


瑛さんが一歩、前に出る。


「そいつを渡せ。

命が惜しければ」


「ちょっ、待てや。

まりあは仲間やろ?

そんな冗談、あかんで」


「冗談じゃない。

俺はずっと、機会をうかがっていた」


冷たい声が、頭に響く。


膝が震えはじめる。


瑛さんは、本気だ……。


あたしを、さらう気でいる。


たとえオーリィを傷つけても。


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