六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「……きら、さん……。
瑛さん……っ!!」
鉄格子の向こうには誰もいない。
ただ、古くさい廊下と土壁があるだけだ。
それでもあたしは、叫ばずにいられない。
「瑛さんっ、瑛さん!!」
やはり、返事はない……。
指先が震えだす。
そうだ。
思い出してしまった。
この鉄格子。
清良と太一が実家に帰ってる間に見た夢。
あの、怖くて怖くて、瑛さんにすがりついて泣き叫んだ夢。
あの夢で、見た……。
「いや……っ」
あの夢の中で。
鉄格子の中で、あたしは泣き叫んでいた。
「出して……!」
同じだ……!
「出してええええっ!!」
叫びながら、同じ事を念じた。
しかし、鉄格子はびくともしない。
「え……っ?」
まさか、と思う。
まさか……。
(外れろっ……!)
足枷に向かって念じるが、やはりびくともしない。