六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
まばたきもできない。
時間が止まってしまったように、体が、思考が強張っていく。
冷たく……。
「……どこまで、説明した?」
「何も。
ただ、無理矢理連れてきただけですから」
一度帰って、外から音羽家の結界を破るよりは、
一緒に連れてくる方が手間が省けると思った。
瑛さんはそう付け加えた。
「ではそなたは、何故ここに連れてこられたか、
全くわかっておらぬというわけか」
滋の目が、少しあたしを哀れんでいるように見えたのは、ほんの一瞬。
次の言葉に、耳を疑った。
「自分が殺されるとも知らずに」
冷たい声が響いた。
意味がわからなかったわけじゃないけど。
あたしの頭は、完全にフリーズしてしまった。
後ろにいる瑛さんも、凍ったように動かない。
その長い睫毛の、一本さえも。