六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


「自分の運命を受け入れろ」


「あたしはっ、何もしてない!

殺される理由なんかないっ!」


「……理由なく殺される者は、いくらでもいる。

それがたまたま、今日までは他人事だったというだけ。


何もしていないだと……?笑わせる。

そなたが生きているだけで、傷つく者がいるのも知らずに」


「あたしが……?」


わけがわからない。


滋は乱暴にあたしの服の胸元をつかんだ。


「このペラペラの服は、いくらした?

この美しい髪はどんな薬品を使った?

そなたが当然のようにしている事は、

全て誰かから労力を搾取し、何かを汚染している」


まぁ、そんな事を言ってもわからないか、と滋は手を離す。


反動でよろけたあたしは、彼の足下に転んだ。


頭上から、冷たい声が降ってくる。


「ただそなたは、【夢見姫】の力を持っている。

それが理由だ」


< 506 / 691 >

この作品をシェア

pagetop