六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「はっ、はは……。
性悪一族か……」
滋はくつくつと喉を鳴らして笑う。
瑛さんはやはり無表情で、それを見ていた。
「もういい、連れていけ。
今度会うのは、儀式を行う日だ」
しっしっと犬を払うようにした手を見て、また怒りが沸騰する。
「絶対、絶対、逃げてやるから!!
あんたの好きになんか、させないから……っ」
まだ、色々言ってやろうと思った喉が、何かに押さえられる。
「静かにしろ」
それは、
一瞬であたしの背後に回った瑛さんがつきつけた、短刀の峰(みね)だった。
ひやり、と冷たいのは刀だったのか、
瑛さんの声だったのか……。
黙ったあたしを、瑛さんは押すようにして大広間から出した。
ふすまの後ろで、滋と琴さんの笑い声がした気がしたけど。
指先も目も、もう冷たい感覚しかしなかった。