六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「入れ」
その後、瑛さんはずっと無言で、
あたしを元の部屋に連れてきた。
あたしも、何も言えなかった。
ただ、泣きたいのをずっとこらえていた。
瑛さんは慣れた手つきで手錠をはずし、代わりに足枷をつける。
あたしは、彼が何か言ってくれるのを待った。
だけど……。
その冷たい顔を見るほど、
裏切られた気持が大きくなってしまう。
いったい、何が夢で何が現実だったんだろう。
一緒に学校に行ったり、ご飯を食べたり。
あたしを守って怪我をしたり、泣いてるのをなだめてくれたり。
アキちゃんをはさんで、親子のように手をつないで歩いたり。
考えればキリが無い。
全てが、幻だったようにも思えた。
だけど。
だけど。
かくれんぼの時に見せた、貴方の涙だけは。
本物だと思っていたのに。