六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「母が……前の夢見姫の予言のせいで、
貴方は一人になってしまったの?」
鉄格子の向こうに出て行こうとした瑛さんに、意を決して声をかけた。
「……夢で見ただろう?
俺の過去を」
「どうして、その事を……」
「俺の夢に、お前がいた。
お前は、幼い俺から話を聞いただろう。
それが全てだ」
ガシャン、と鉄格子を閉めながら彼は言った。
「お前は人の夢に入り込むこともできるらしいな。
初めて知った」
「あたし、わざとやったんじゃありません」
「そうか。
それももう、どうでもいいことだ」
冷たく吐き捨てると、瑛さんは何も無い空間に手を伸ばす。
「あ……っ」
すると彼の肩に、アキちゃんが現れた。
「儀式は、明後日の晩に行われる。
それまでの慰めにするがいい」
瑛さんがそう言うと、
アキちゃんは普段のように、あたしにすり寄った。