六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
疲れが出てきたのか、今更うつらうつらとしはじめる。
あたしは舟を漕ぎながら、
ぼんやりとお母さんの事を思い出した。
お母さん……。
ごめんなさい。
言う通りにしなかったからだね。
あたしに、勇気がなかったから。
瑛さんに、好きだと言えなかったから。
何回も、機会はあったのに。
いつも怖じ気づいて、逃げたから……。
だから、お母さんの言う『困難』に、今見舞われてるんだね。
相手があたしをどう思っていようが、
言ってみたら良かったんだ。
『貴方が好きだから。
力を封印させるならば、貴方とが良い』
と。
でもね、お母さん。
あたしは、どうしても。
想いあった人とでなければ、そんな事できないし。
あの人の寂しさにつけ込むような事は、したくなかったんだ。