六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
『それはそうだけどね』
突然近くで声がして驚いた。
しかも、目の前には、自分と似たような顔をした女の人。
お母さんがいたのだ。
「あれ!?
あたし、寝てるの!?」
『そうよ。
心配で、思わず来ちゃった』
お母さんは深刻な顔でうなずいた。
周りを見ると、そこは音羽家の祭壇だった。
「帰ってこれたんじゃないの……?」
『残念だけど、夢。
だから私も、少ししかいられない』
がっくり。
囚われの身であることのほうが夢なら、どんなによかっただろう。
『……封印、間に合わなかったのね』
「……知ってるんだね……」
お母さんの暗い声が、ますます追い討ちをかけた。
でも、今のあたしにとっては、この人しか頼れない。
「お母さん、どうすればいいの?
結界があって、皆に助けを呼べないの」