六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
『大丈夫。私が留衣の夢に出て、伝えるから』
頼もしい瞳で、お母さんはうなずいた。
『でもね、きっと彼らが来るまでに、
貴女は【六花の翼】を出現させなければならなくなるわ』
「そんな……」
『出せなかった勇気を、今から出すのよ。
決して、あきらめないで』
「出せなかった、勇気……」
『彼を……岡崎瑛君を、信じてあげて』
どくん。
名前を聞いただけで、胸の傷が開いて、痛みが溢れ出す。
「信じろって……
でも、あたしは……」
口にしたくなかった。
そうしたら、もう本当にそれが真実になってしまいそうだったから。
〈あたしは、瑛さんに裏切られた〉
そんな被害者みたいな台詞、言いたくない。
あたしはお母さんをにらみつけた。