六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
強引に、彼の唇が、あたしの唇に押し当てられた。
寂しい。
寂しい。
彼のキスは、いつもそう言っているようだった。
その彼に抗えないあたしは、
素直に口を開いて、彼の侵入を許してしまう。
そして……。
やはり、と思った。
長い、永遠にも思えるような口づけの後で。
違和感が、喉を通っていく。
あたしは抵抗せず、
どちらのものともつかない唾液とそれを、一緒に飲み込んだ。
途端に、力が抜けていく。
薬を飲まされたのだ。
きっと、これであたしは儀式の時まで目覚めない。
さようなら。
残酷なほど、綺麗だったひと。
ずっと、大好きだったひと。
瑛さん。
さようなら。