六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
気がつくとすぐに、女の人たちが部屋に入ってきた。
放心しているあたしに、着物を着せていく。
意識を取り戻させたのは、冷たい声だった。
「ずいぶんと大人しくなってしまわれたわね。
やっと観念したの?」
「…………」
着替えたあたしの前に立ったのは、琴さんだった。
しかし、反論する気も起きない。
ただ、醜い嫉妬だけが、胸に渦巻く。
この人は、これから瑛さんと生きることを許されている。
それが、恨めしかった。
あたしは、拒絶されて。
お母さんとの約束も守れなくて。
この結界の中で、絶えていくのに。
「また、何か企んでるの?」
やはり答えないあたしを、不気味に思ったのか。
彼女も、それ以上は何も言わず、あたしを部屋から出した。