六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
案内された廊下は、今までとは違った。
一体どこからどう繋がっているのか、
琴さんが呪文を唱えると、突然壁が動いて。
目の前に現れたのは、渡り廊下だった。
「行きなさい」
背中を押され、ふらふらと歩いていく。
そんなあたしの髪を、風がさらった。
ふと下を見て、この廊下が地から遠く離れている事に気づく。
そして。
外の景色に、息を飲んだ。
真ん丸い満月の下には、青々とした山が立ち並んでいる。
木造の住宅に、田畑。
「……綺麗……」
ぽつりと、つぶやいたのは無意識。
あたしはこの景色を前にも見た。
夢で……。
あの夢は、昼間だったけど。
あれは、この村の景色だったんだ。
瑛さんが、育った村の……。
そう思うと、涙が一粒だけ、鼻の横を通っていった。