六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
到着したのは、
屋敷と渡り廊下で繋がった砦(とりで)だった。
しかし、普通の砦とは違う。
あの大広間のように、巨大な空間を持った砦だった。
中に入らされると、その中は異様な匂いが充満していた。
何かの薬のような。草花のような。
そして、耳に聞こえてくるのは読経。
それが、砦の結界を強固なものにしているとわかったのも、無意識だった。
部屋の中心をぐるりと輪になり取り囲んだ、
何十人もの忍の読経が響き渡る。
取り囲まれた部屋の中心に、あたしは連れていかれる。
そこには悪趣味な、天蓋(てんがい)がついた寝所が作られていた。
「待っていたぞ、夢見姫」
その寝所に張られた幕をふわりとよけたのは、
やはり岡崎滋だった。