六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「馬子にも衣装とはこのことか」
滋は、あたしの格好を見て薄く笑った。
長い髪はそのままに、襦袢の上に赤い着物を着せられたあたしは、
そんなにおかしいのだろうか。
「もったいない気もするな。
今夜でこの姫がいなくなってしまうとは」
何の冗談だろう。
意外に冷静な気持で、あたしは辺りを見渡した。
忍たちは目を閉じ、読経に集中している。
その中に、瑛さんの姿は見えなかった。
「……っ!!」
瑛さんの姿を探してよそ見をしていたあたしの手首を、滋がつかんだ。
痛いほどの、強い力で。
「さあ、こちらへ…夢見姫」
「いやっ……」
「今さら抵抗してもムダだ」
滋はあっさりと、あたしを薄い幕の中へ招き入れてしまった。