六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
だけどもう、後には退けない。
(翼よ、彼の背に……根付け!!)
「ぎっ……が、ぁ、ぐああっ、ああああああ!!」
綺麗だった彼の顔が、聞いた事もない絶叫で歪む。
しかし、瑛さんは翼が生えかけた背を負ったまま、立ち上がった。
「あぁあぁあああああああ!!」
ばさり。
絶叫がやんだあと、聞こえたのは。
産まれたての翼の、産声だった。
「はぁっ、は、あぁあ……っ。
まりあ……っ」
瑛さんの背中に生えた、巨大な翼は、
今にも彼を押し潰してしまいそうだけど。
彼は、そっとその手をあたしに差し出した。
「帰ろう……」
何が乗っていたわけでもない。
ただあたしはその手の平を、何よりも綺麗だと思った。
「……はい!」