六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
小さな屋根の正体は、小さな洋館だった。
まるで、あたし達が夏休み前まで暮らしていたような。
その庭に、あたし達は風を巻き起こしながら着地した。
その瞬間、風圧にたじろいでいた皆が、駆け寄ってくる。
「皆!」
「まりあ!!」
「姉ちゃん!!」
清良と太一、それに留衣さんにオーリィ。
「瑛さん、皆だよ……
皆がいる……!」
嬉しくて振り向くと、瑛さんは何も言わず、その場に崩れ落ちた。
「瑛さん!」
ぐらり。
自分の視界も揺れた。
「姉ちゃん!」
仰向けに倒れそこなったあたしを、太一が支えた。
「ぐぁ、あぁ……っ」
獣がうなるような声が、瑛さんの喉からした。
頼りない雪の結晶だった翼は、
今や確かな純白の実体を持ち、瑛さんの背中を突き破っていた。
力をほとんど使い果たした彼に、それがどれほどの痛みを与えるのか。
あたしにはわからなかった。