六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「ついに来たか……」
太一が、塀の向こうの砦を見て呟いた。
琴さんに案内され、岡崎一族の村に着いたのは、半日後の事。
既に日は落ちて、周囲は暗闇と化していた。
留衣さんは連絡役として、少し手前で待機している。
あたしは、制服――何故か清良が持ってきた着替えは、これだった――のスカートの裾で、
手のひらの汗をぬぐった。
「本当に味方、いるんでしょうね?」
「当たり前やん。
気配を消してるだけやで」
緊張している清良に、オーリィはのんびりと言った。
「私がこの結界に穴を開けます」
琴さんが言う通り、
塀の前に、透明の結界があって、手を触れる事もできない。
まるで村が、ガラスに覆われているみたいだった。
「穴が開けば、すぐに気づかれるでしょう。
心の準備はよろしいですか?」
琴さんの言葉に、全員が静かにうなずいた。
――最後の戦いが、始まる――。