六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「太一、スゴい!」
「感動してる場合かよ!」
鷹が太一の肩に戻る。
ふと、消えてしまったアキちゃんの事を思い出した。
そんな場合ではないと、首を振る。
こうしてあたしと太一は、砦にたどり着いたのだった。
後ろを振り返り、ぞっとする。
清良やオーリィがいるところに、わらわらと黒い影が見えた。
まるで、餌に群がる蟻のように……。
しかし、清良が振り回しているのだろうきらめく白刃や、
オーリィの腕がえぐったのであろう地面の五本の指の痕が、
あたし達に勇気を与えた。
「行くよ、姉ちゃん」
「はい」
あたしは、いつの間にか頼もしくなった太一の横顔を見て。
うなずき、砦の扉に手を伸ばした。
「っつ……」
バチ、と静電気のような衝撃を感じ、指を引っ込める。
「やっぱり、結界か」
太一が舌打ちをした。