六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


「あたしが、やってみる」


再度、手をそろそろと伸ばす。


琴さんがしていたように……。


(中和しろ……)


念じながら、手を扉にあてる。


(溶けろ……!)


結界は抵抗したが、やがて、

霊力を送り込む手の形に、ぐずぐずと溶けだした。


すぐに身体中に汗がにじみだす。


やはり、六花の翼を出現させた時に、莫大な霊力を使ったせいか。


身体中の関節が、ギシギシときしんだ。


これ以上したら、壊れちゃうよ。


そう言うように。


「……開け!」


だけど、そんな事にかまっていられない。


あたしはとにかく力を出して、結界に穴を開けた。


パキイ、と音がして。


途端に、砦の中からザワザワと声が聞こえだす。


あたしと太一は顔を見合わせて。


「せーの!」


と、同時に扉を開け、中に入った。


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