六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
ぶわり、と異常な霊気が全身を包む。
砦の中では、昨夜のように、正体不明の読経が響いていた。
そこで、あたし達が見たのは――。
「瑛さん!!」
あんまりな光景に、太一は言葉を失った。
燃えた寝所の痕に残った太い柱に、瑛さんは縛りつけられていた。
それだけではなく、全身のいたるところが傷つけられて。
濃い紫色の忍装束は、ほとんど黒に染められていた。
そして、六花の翼は……。
天井から、床から、蜘蛛の巣や縄で、ぐるぐる巻きにされていた。
しかも、翼は瑛さんの身体と同じように。
苦無や短剣で何ヵ所か、貫かれている。
床に、何枚も巨大な羽根が落ちていた。
その何枚かは、瑛さんの足下の、赤い血溜まりに――。
「……ひ、でぇ……」
太一は、やっとそれだけ言った。